学校眼科医として毎年学校保健に係わっていること


学校眼科医部会 部会長 池袋 信義

学校眼科医として毎年学校保健に係わっていること

定期健康診断 
 この1年の学校生活を清潔で快適に過ごせるよう毎年4,5月に定期健康診断が行われます。はやり目などの感染性結膜炎や霰粒腫など眼瞼疾患、斜視などの眼機能異常を見つけ必要があれば眼科での治療や検査を勧めます。最近の傾向として感染性結膜炎は少なく、何らかのアレルギーによると考えられる結膜炎が多いようです。この健診で見られる主な斜視には、間欠性外斜視や内斜視があります。間欠性外斜視は特に視力には影響しませんが、内斜視の中には視力に影響するものもありますので、見つけたら眼科専門医での検査が必要です。

低視力児童の対応
 定期健康診断で行われる視力検査で視力が0.9未満の児童に眼科受診の勧告書を出して各医療機関にて精密な視力検査を行います。屈折異常(近視、遠視、乱視)の程度を判定し、視力が悪い児童には眼鏡装用を勧めます。軽度の遠視は問題ありませんが、強い遠視では視力低下(いわゆる弱視)や内斜視をきたすことがあります。視力検査の結果は、養護教諭により集計され眼科医会の代表が毎年1月に開催される横浜市学校保健大会にて報告します。高学年になるとともに近視の児童が増えてきます。近視は、適切な度の眼鏡を装用しても成長期に急に進むことがありますので、毎年の視力検査は欠かせません。

色覚異常 
 色覚検査は、以前は小学校4年生のときに検査をしていました。しかし平成15年度より学校保健法施行規則の変更に伴い中止になりました。
色覚異常は、男子の約5%に女子では約0.2%の割合でみられます。それゆえ比較的身近なところで認識されると思います。日常生活に支障なく車の免許証も問題ありません。一時は大学や職業において制限がありましたが、最近では大幅に緩和されほとんどの大学では問題ありません。しかし就職ではまだ一部制限されているところもあります。先天性のため自覚に乏しく、間違った色使いや異なった色を言うことで気付くことがあります。気付かない周囲の人から誤解を受けたり、希望する職業に就けなくて将来の希望を変えざるを得ない場合もあります。このような色覚異常を有する児童が、学校生活を安全にかつ健康的に送るため表示の仕方やチョークの色、さらに教科書の記載にも配慮が必要と考えます。色覚異常を有する児童が特別視されることなく、また劣等感を抱かないように配慮することが必要です。知らずに就職や進学して色の変化がわからず問題が生じることが少なからず見られます。早めに検査を受けて自分の体質を認識することが必要です。眼科医会ではこのような不都合を防ぐため希望者には、無料で簡易的検査を致しておりますので養護教諭にご相談ください。

就学時健康診断
 11~12月に就学前の児童に対して健康診断が行われます。学校保健法では、就学前の健康診断の検査項目に視力検査が入っています。平成22年度から視力検査が行われるようになりました。就学前に視力を確認し、支障なく皆と平等な学校生活が送れるかどうか知るためにも視力検査は必要です。また片眼の弱視を発見するためにも就学前の視力検査は欠かせません。しかし限られた時間内で多くの児童の視力を測定することは要領が必要です。6歳児の視力測定は、5m(3m)の距離でランドルト環の単独指標を用いて行われます。初めての経験で緊張している児童と視力検査になれていない教諭の方々での検査は大変だと思います。この度「園児のための視力検査マニュアル」が日本眼科医会のホームページよりダウンロードできるようになりました。また少しでも視力検査がスムーズに行われるよう横浜市眼科医会では、視力検査キット(ランドルト環単独視標、検眼枠、遮蔽板、アクリル製ランドルト環)を市内の全小学校に寄付をいたしました。
 片眼の弱視の場合なかなか気付かない事があり、できるだけ早い段階(3歳ごろ)に見つけ治療を開始することが理想です。遅くとも6歳までに見つけることができれば保護者の協力の下、根気と継続的な治療でよい結果が期待できます。治療の開始時期が遅くとも正常な視機能の取得が可能な限り弱視治療を継続していく必要があります。