学校歯科医の活動


学校歯科医部会 部会長 大垣 敦則

 学校保健安全法に基づき、横浜市立の小・中・高・特別支援学校の計515校(H24年4月現在)には、歯と口の健康をあずかる学校歯科医として横浜市歯科医師会に所属する歯科医師が従事しております。その職務は、健康診断・相談・授業等を通して、保健管理・教育・組織活動に関する専門的事項に関し、技術及び指導にあたっております。一校あたり生徒数131名から1,471名の大規模校まで、それぞれ一名の歯科医師が担当しております。
 4月から6月末までに実施される歯科健康診断、ならびに秋の就学時健康診断においては、限られた照明の中、探針使用の制限、歯科材料の進歩等による治療痕の判別の難しさがあります。以前、健診結果を『歯科治療勧告書』としていた保護者への通知が、『歯科治療のおすすめ』として改変されました。これは、健診がスクリーニング(ふるい分け)目的であることのご理解が必要なことです。感染予防対策として、検査器具は現在業務委託による滅菌消毒、一括集配システムを実施しており、児童・生徒毎のグローブ交換やディスポの検査器具は、一部の学校歯科医が自身の費用負担で使用しているようです。現在のところ、全市的には費用面で困難と思われますが、ダブルミラー法(直接手を口に触れず2本のミラーで健診する)を採用している学校歯科医もおり、将来的に全市的な採用を更に引き続き検討していく必要があります。
 教育活動として顕微鏡を持ち込み口腔内の生きた細菌を観察することで、口腔衛生管理の重要性を指導したり、歯を口の中の臓器としてだけではなく、胃・腸と同じく消化器として体の重要な臓器であることなど授業を通して積極的に健康教育をしたりされている歯科校医の報告もあります。また、保健委員会に参加し専門的知識の助言を通して保健教育にも関与しております。これらは、制限された授業カリキュラムの中では、校長、担任教諭、養護教諭、PTAとの連携協力が必要なことです。
 最近、社会問題化されている児童虐待においても歯科医が口腔内所見から発見するケースがあります。学校歯科健診で、6年・4年・1年のきょうだいが、十分な歯科治療を受けられず、永久歯・乳歯がほぼ全う蝕状態とのことです。家庭事情が複雑で、校長が民生委員を通じ生活保護を受けることを勧めてみても、また養護教諭が家庭訪問をして治療の勧告をしても改善なく経過している中、歯科校医が緊急性を促し児童相談所へ通告したとのことでした。
 このような問題も含め、食育に関する健康教育など今後、多様化する健康課題に的確に対応するため健診業務の管理にだけとどまることなく、学校歯科医としての立場で教育にも積極的に参加し、具体的な活動を通して学校保健の向上に寄与したいと考えます。