学校歯科医部会 「続・食についての思い」


学校歯科医部会 部会長 山口 則子

 私たち人間は、その長い歴史の中で「食」を単なる生命維持のための「栄養摂取」ばかりではなく、料理として、さらに共に食事をとることにより「心のふれあい」や「作法」「習慣」を広めてきたのだと思います。
 かつては、感染症や災害、事故、そして食糧不足による栄養不良は「死」を招くことに繋がりました。
 近年、飽食の時代を迎えて食物が身近にあふれ、多種多様な加工食品が店頭にならび、食べなくてもよいものまで食べさせられるようになっている気がします。必要以上に食べることで、逆に「死」を招く病に侵されることも少なくありません。
 日本学校保健会の調査より、♢起床後学校に行くまでの時間が少ない児童は、朝食にかける時間も少なく朝食の欠食も多い。♢よく噛むと体によいと思っている児童は意識してよく噛んでおり、食事(食べ物の味や香り)を楽しんでいる。 ♢保護者が意識してよく噛むための食材を出している場合、食事の時に子どもによく噛んで食べるよう話しており、子どももよく噛むことを意識して食べている。♢「いただきます」や「ごちそうさま」をきちんと言っている児童は、食事を作っていただいた人への感謝の気持ちを感じており、食事の準備や片づけを手伝っている。等の結果が得られています。
 学童期においては、奥歯である第一大臼歯(6歳臼歯ともいわれています)が生えてきますと、咀嚼(そしゃく:かみくだくこと)効率が高まるため、噛みごたえのある食品を積極的に取り入れてみてください。乳歯と永久歯の生え換わりの時期には、前歯や奥歯で噛みあわせることが困難なため、調理法や食材の大きさ、食べ方の注意が必要です。また、生活リズムを整え、朝食をしっかり食べて間食や夜食を控えることも大切です。さらに家族や友達と一緒に食べる機会を増やし、お互いによく噛んで味わう食事を体験することで過食や偏食を防ぐことが期待できます。
 富山で行われたコホート研究で中学校3年生の食事調査が行われました。朝食の欠食や不規則な間食、運動不足・運動嫌い、夜更かし・睡眠不足が小児肥満と関連しているとのことです。
 食べる力が育っていないと、よく噛まずに丸呑みしやすくなり、窒息のリスクが高まったり消化器官への負担が大きくなったりします。また口いっぱいに頬ばって早食いする傾向になり、過食や肥満を招いたり、味わいや食の満足感を得にくくなったりします。
 「よく噛むほどおいしくなるよ」と声をかけることで、健口・健康支援につながると思います。